紅茶葉の「ポットのためのもう1杯」が必要なワケ

紅茶について

イギリスで紅茶を淹れる際、伝統的に「ポットのためのもう1杯」と呼ばれる、ティースプーン1杯分の余分の茶葉をポットに入れることがあります。
人数+1杯分というこの慣習、紅茶を淹れるポットに敬意を払うようなティータイムを大事にしているイギリス人の人間性が見えるようで面白いですが、そこには色々な理由がありました。

 

茶葉が大きすぎるために抽出に時間がかかるため

「ポットのためのもう1杯」というルールが生まれたのは、紅茶の製造がまだまだ進んでいなかったヴィクトリア王朝時代だと言われています。
この頃の茶葉はそのほとんどがオレンジ・ペコーのような大型の葉で、紅茶を抽出するのにはかなりの時間がかかっていました。
色の濃い香りの良い紅茶を抽出するためには、たっぷりのリーフで十分に時間をかけて蒸らす必要があったのです。
そのため、人数分よりも多い量の茶葉をポットに入れるようになりました。

イギリスの水質による考慮

イギリスなどのヨーロッパの水は主に硬水で、紅茶の成分のタンニンが抽出されにくく、色が美しく出ない傾向にあります。
最近の茶葉ではそういう問題もほとんど解消されていますが、紅茶が出回り始めた当時のイギリスでは厄介な問題だったことでしょう。
そのため、茶葉を多めに入れて色の濃い紅茶を抽出しようと考えられた方法でもありました。

 

濃くなった分はお湯で割ればよい

上記のような理由と同時に、至極現実的な理由もあります。それは、茶葉をケチって薄く抽出したものは美味しくなくて飲めませんが、茶葉をたくさん使って濃く抽出した分はお湯で割ってしまえば問題ないというものです。
イギリスでは濃いめの紅茶にミルクを加える飲み方が広く好まれていたので、濃くなりすぎた紅茶を薄めるためのお湯を入れる専用の「ホットウォータージャグ」という容器もありました。
これはティーポットと同じようなサイズのもので、2杯目をおかわりするまでの間に濃く抽出されてしまった紅茶を薄めるために用意されたものだそうです。
いずれの理由にせよ、日本の水は基本的に軟水なので、タンニンも抽出されやすく美しい美味しい紅茶を飲むことが出来ます。
イギリスの淹れ方だからと茶葉の量まで忠実に再現していては、濃くなりすぎて渋味が勝ってしまいます。それこそ「ホットウォータージャグ」を用意しておかなければいけません。
余程茶葉の量をケチらない限り、日本で「ポットのためのもう1杯」は絶対的に必要ではないと言えます。

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