スリランカの紅茶

紅茶について

スリランカの紅茶は生産量こそインドに及びませんが、その輸出量は世界一
また、インドの茶葉に比べてクセがなく、どの茶葉も飲みやすいことで人気があります。これは一年を通して温暖な気候と豊富な雨量があるためと言われています。
1839年にアッサム種の茶樹が、その数年後には中国種の茶樹がイギリス人によって持ち込まれました。
かつてはセイロン島と呼ばれていたため、紅茶も「セイロンティー」という名で広く出回っています。

生産地による銘柄だけではなく、標高によっても、ハイグロウンティー(1200~2500m)、ミディアムグロウンティー(600~1200m)、ローグロウンティー(600m以下)の3つに分類されます。日本で一般的にイメージされるセイロンティーは、ハイグロウンティーと言われています。

代表的な茶葉は「ウバ」「ディンブラ」「ヌワラエリア」「キャンディ」「ルフナ」の5種。これらはまとめて「ファイブ・カインズ・ティー」と表現されます。

 

ウバ

ウバはスリランカの中央山脈東部の地名で、標高1200~2500mのハイグロウン地域でその茶葉が栽培されています。
6~7月にインド洋から南西モンスーンが吹き込み、中央山脈の西部に雨を降らせ、それがやがてこの地方にやってきます。ハイグロウン特有の直射日光によってモンスーンは乾いた風となり、茶葉に花のような甘く爽やかな香りと力強い渋みをもたらします。

最初に手掛けたのは世界の紅茶王リプトン

ウバの栽培に最初に手をかけたのは、世界の紅茶王と呼ばれたかの有名なトーマス・リプトン。日本でも有名な紅茶ブランド「リプトン」の創始者です。
リプトンは、1890年にスリランカを訪れ、翌年にアッサム種の茶樹を植えました。
スミレやスズランのような甘く爽やかな花の香りや、メントール系のすっきりとした香りが芳醇に香り、他の紅茶にはない香り高さが楽しめると評判になりました。以来、その豊かな香りと渋みが高く評価されるようになり、インドのダージリン、中国のキームンと並び、世界三大銘茶に挙げられています

クオリティシーズンは7~8月

収穫のシーズンは6~9月ととても短く、そのため収穫量も少ない希少価値の高い茶葉です。
中でも7~8月の真夏の時期に収穫される茶葉で淹れた紅茶には、カップの縁にできる「ゴールデンリング」が一際美しく現れると言います。
このクオリティーシーズン(最高品質の時期)のものには「ゴールデンチップ」も含まれていることが多く、そのため高級な紅茶として知られています。
また、香りも一段と高まり、「ウバフレーバー」と呼ばれて人気も集中します。
この香りにタンニンの刺激的な渋みがバランスよく広がり、爽快感のある飲み心地が楽しめます。そのため、ストレートでも美味しくいただけますが、ミルクティーに合わせても口当たりがまろやかになりオススメです。

 

ディンブラ

ディンブラはスリランカの中央山脈の南西部の地名で、ハイグロウンの地域になります。ウバとは中央山脈を挟んで丁度反対側に位置しています。
特別個性を主張するような茶葉ではありませんが、ほのかな花の香りと穏やかな飲み口はクセがなく、万人受けをする傾向にあります。
そのため、様々なアレンジの利く茶葉でもあり、多くの喫茶店やカフェで重宝されている茶葉でもあります。

バリエーションに富むアレンジ

すっきりと爽やかなディンブラは、個性が薄いのでどんなアレンジにも適した茶葉です。アイスティーにするも良し、ミルクティーにするも良し、ストレートでも美味しくいただけます。
水色は濃いめのオレンジ色なので、ミルクを加えるとクリームブラウン色が美しく魅力的でもあります。

また、風味のバランスも良いので、フルーツやスパイスとも合わせやすく、単に紅茶として飲む以外にも様々なアレンジが利く便利さも人気の一つです。

クオリティーシーズンは1~2月

ディンブラは年間を通して収穫される茶葉ですが、特に1~2月の真冬の時期に収穫される茶葉は、スリランカ特有の季節風が山の斜面に当たり乾いた風を運ぶため、ディンブラのバラの香りがより引き出され華やかさが加わると言われています。
このため、1~2月の時期がディンブラのクオリティーシーズンとされています。

 

ヌワラエリア

ヌワラエリアはスリランカの中央山脈西部の地名で、ハイグロウンの地域になります。標高1800~2000mとスリランカの中でもかなり高地で作られている茶葉です。
この地域は、朝夕は5~14℃、日中は20~25℃と一日の温度差が大きいため、茶葉に「タンニン」の含有量が増え、強い渋味を生み出し、シャープな口当たりになると言われています。
また、この温度差は茶葉の香りも豊かにし、スリランカ紅茶の中でもヌワラエリアは「セイロンティーのシャンパン」と称されるほど香り高い茶葉に仕上がります。

紅茶によって生まれた避暑地

ヌワラエリアは元々は集落もない未開の地でしたが、19世紀後半に茶園が開かれて以来、その暑すぎず寒すぎずという気候が人気を呼び、今やリゾート地となっています。
イギリス様式の家屋が立ち並び、「リトルイングランド」と呼ばれ、避暑地として多くの富裕層が訪れました。
1895年には茶園とリゾートを兼ねる「ヒルクラブ」というクラブハウスも建てられ、これは今でも茶園主によるティーパーティや紅茶関連の会合などが行われる場として使われています。

クオリティーシーズンは1~2月

収穫時期は1~3月と8~9月の年2回に分けられていますが、ヌワラエリアの独特な強い渋味と高貴な香りが一番引き出さるのが1~2月の真冬の時期で、この時期がクオリティーシーズンとされています。
爽やかな花の香りに加え、日本の緑茶のような爽やかな渋味がフルーティさとコクを与え、とても優雅な味わいを醸し出してくれます。
ストレートでオレンジ色かゴールド色に近い水色を楽しみながらじっくりと味わうのがオススメですが、ミルクを加えても美味しくいただけます。

 

キャンディ

キャンディとは元々スリランカの中央部にあった王都の名前で、現在でもスリランカ中央部の中心的な都市となっています。
標高は600~1200mのミディアムグロウンの地域で、ここで栽培される茶葉は渋味とコクのバランスが良く、口当たりも良い飲みやすさがあると言います。
オレンジがかった水色(紅茶の色)が白いティーカップにとても映え、美しく輝いて見えます。

クオリティーシーズンは1~3月

キャンディはディンブラ同様一年を通して栽培されており、またディンブラの低地部に隣接してもいるため、1~3月頃に収穫される茶葉が一番高品質であるとされています。
タンニンの含有量が他の茶葉に比べて少なく、アイスティーにしても白濁り(クリームダウン)しにくいことから、アイスティー用の茶葉としても用いられています。

 

ルフナ

ルフナはスリランカの東部から南部にかけての地域で、元は古い王国の名前です。現在はサバラグムワと呼ばれる地域になっており、熱帯雨林が点在する高温多湿な気候、標高も低いローグロウンの地域になります。
このため、茶葉は他の地方のものよりも1.5~2倍ほど大きく育ち、独特な風味を生み出すと言われています。

ルフナはセイロンティーの約半数を占める程の生産量を誇っており、特にサウジアラビアで人気が高く、ヤギのミルクを使ったミルクティーとして飲まれることが多いそうです。
濃い赤茶色の水色に、中国のラプサンスーチョンのようなスモーキーフレーバーがあり、セイロンティーの中でも個性際立つ存在となっています。

クオリティシーズンはない

一年を通して20日程の間隔で14~15回も収穫が出来るルフナには、特別な時期であるクオリティーシーズンはありません。
安定した味を一年中楽しめるので、大きな当たり外れもなくいつでも美味しい紅茶が飲めます。

発酵時間がとても長く、90~120分かけてじっくりと発酵させていきます。わずか10分ほどしか発酵させないものもあるヌワラエリアの茶葉に比べると、いかに発酵に時間をかけているのかが分かります。

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