中国の紅茶

紅茶について

お茶の発祥は中国であると言われており、実際現在でも中国ではお茶が良く飲まれています。
しかし、飲まれているのはほとんどが緑茶で、紅茶は主に輸出用として生産されています。
紅茶は今でも大部分が手作業で作られていますが、現在はヨーロッパでの需要の高まりに応えるため、CTC製法で作られている茶葉も増えてきています。かつてはすべて手作業でオーソドックス製法で作られており、中でも特に品質の良いものを「工夫紅茶」と呼んでいました。

中国の紅茶は大きく分けて2タイプあり、一つは一般的な「紅茶」、もう一つは「燻製茶」です。

 

キームン

漢字表記で「祁門」と書くキームン(またはキーマン、キーモン)は、中国の安徽省黄山山脈の周辺の地名です。こちらは中国紅茶の分類では、一般の紅茶に当たります。
エキゾチックな香りが芳醇で、鮮やかな紅色の水色(紅茶の色)はルビーにも例えられ、とても澄み切っています。風味も渋味が少なく甘味とコクがある深い味わいです。

中国茶のブルゴーニュ酒

キームンのその独特のエキゾチックな香りは、蘭の花、リンゴ、ハチミツなどを思わせる甘い香りで、「キームン香」と特別に呼ばれてもいます。ヨーロッパでは「中国のブルゴーニュ酒」とまで評されており、「口の中に春の香り、キームンの香りがやってきた」と表現することも多いそうで、その香り高さが窺えます。
一般的なものはもう少しスモーキーな感じですが、上質なものほどこの蘭の花のような香りがするようです。
このため、インドのダージリン、スリランカのウバと並び、世界三大銘茶の一つに挙げられています

また、イギリスではミルクティー(ティー・ウィズ・ミルク)に最適の茶葉とも言われており、神聖視さえされる中国種で、東洋の神秘的な味と香りを持つ茶葉として称賛されているそうです。
イギリスの王室御用達となっており、現在でも女王陛下の誕生日にはキームン・ティーを飲む習慣が残っています。

クオリティーシーズンは8月

中国の中でも安徽省祁門は、夏は暑く、年間200日も雨が降るため水分も多いので、お茶の栽培に適していると言われています。
キームンの収穫時期は6~9月と短いですが、茶葉に適した土地と気候、手間と時間を惜しまない丁寧な紅茶づくりのおかげで上質な紅茶に仕上がります。
クオリティーシーズン(上質な茶葉が出来る時期)は真夏の8月と言われています。

 

ラプサンスーチョン

中国紅茶のもう一つの「燻製茶」に当たるのが、福建省武夷山の西武で作られる「ラプサンスーチョン」です。漢字表記で「正山小種」と書かれます。
「燻製」というのは、茶葉に松の木を燃やして出た煙を当てることであり、そのためラプサンスーチョンにはスモーキーな独特の香りがついています。
この香りは茶葉の製造過程で偶然についてしまったもので、中国の製茶商人からしてみれば失敗作でした。しかし、これがそのままヨーロッパへと渡ると、ヨーロッパの人々は、お茶の聖地と言われた武夷山で生産された聖なる紅茶だと思い、これをあがめそして求めました。
その後、中国の茶商人、イギリスの貿易商の企みもあり、この茶葉は次第に姿を変えていくこととなります。
詳しくは「「正山小種」と「ラプサンスーチョン」」に譲っていますので、そちらをご参照ください。

クオリティーシーズンはない

ラプサンスーチョンは一年を通して収穫されており、かつ松の木を燻した煙の香りを茶葉につけるため、特別上質な茶葉が出来るというクオリティーシーズンはありません。
その意味では、一年を通して安定した品質のものを楽しむことが出来ます。

また、ラプサンスーチョンは「アールグレイ」のルーツとも言われています。
当時海軍大臣を務めていたイギリスのグレイ伯爵が中国の「正山小種」を求め、茶商人は生産量の少なかった「正山小種」に替わるものとして作った茶葉が「アールグレイ」でした。
こちらについても詳しくは「アールグレイの誕生」で解説していますので、併せてご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました